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俺には日々無心を心掛ける生活の中で、唯一の楽しみがあった。
──魔法だ。
そう、魔法!!
なんとこの世界には、前世にはなかった魔法が存在するのだ。
流石異世界ファンタジー!
俺が意識を覚醒させて何日か経ったある日。
母親が料理中に包丁で指を切って、魔法で治療しているのを見た時は驚愕したものだ。
なんせ、一瞬で傷が消えたのだ。
俺の持つ前世の常識からしたら、あり得ないどころではない。
それを魔法と呼ばずに、なんと呼べるだろうか?
その後も母親は少し不器用で天然らしく、度々ケガをしては回復魔法を使用しているのを何度も目撃した。
「“ヒール”」
何時もその言葉と供に傷口が光に包まれ、一瞬で治癒した。
何度見ても、信じられない。
まるで現実味のない光景だ。
だが、俺は前世から知識欲だけは強く、人一倍はあった。
よって、その晩すぐに見よう見まねで試した。
「ふぃぃう」
……発動しなかった。
しかも赤ん坊の舌ではろくに、詠唱も出来なかった。
己の無力さを再び感じた。
赤ん坊って本当に無力だな……。
でも、詠唱時身体の中で何かが巡るのを感じた。
全く効果が出ないというわけではないのだろう。
これが魔力というものなのだろうか?
だとすると、詠唱がしっかり出来れば正しく発動する可能性はある。
まぁ、時間はたっぷりある。
検証や練習を重ねていけば、発動出来るようになるだろう。
……歩行と滑舌も、……きっとマシになる。
その時こそ、脱介護生活だ!
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