第1章 俺が乙ゲー転生ってマジですか?

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俺には日々無心を心掛ける生活の中で、唯一の楽しみがあった。 ──魔法だ。 そう、魔法!! なんとこの世界には、前世にはなかった魔法が存在するのだ。 流石異世界ファンタジー! 俺が意識を覚醒させて何日か経ったある日。 母親が料理中に包丁で指を切って、魔法で治療しているのを見た時は驚愕したものだ。 なんせ、一瞬で傷が消えたのだ。 俺の持つ前世の常識からしたら、あり得ないどころではない。 それを魔法と呼ばずに、なんと呼べるだろうか? その後も母親は少し不器用で天然らしく、度々ケガをしては回復魔法を使用しているのを何度も目撃した。 「“ヒール”」 何時もその言葉と供に傷口が光に包まれ、一瞬で治癒した。 何度見ても、信じられない。 まるで現実味のない光景だ。 だが、俺は前世から知識欲だけは強く、人一倍はあった。 よって、その晩すぐに見よう見まねで試した。 「ふぃぃう」 ……発動しなかった。 しかも赤ん坊の舌ではろくに、詠唱も出来なかった。 己の無力さを再び感じた。 赤ん坊って本当に無力だな……。 でも、詠唱時身体の中で何かが巡るのを感じた。 全く効果が出ないというわけではないのだろう。 これが魔力というものなのだろうか? だとすると、詠唱がしっかり出来れば正しく発動する可能性はある。 まぁ、時間はたっぷりある。 検証や練習を重ねていけば、発動出来るようになるだろう。 ……歩行と滑舌も、……きっとマシになる。 その時こそ、脱介護生活だ!
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