2243人が本棚に入れています
本棚に追加
03話 おねだり
そしてそれから1年近く経った頃、俺はとうとう介護生活から脱却した!
本当はもっと早く歩くことは可能であった。
しかし、生後1、2ヶ月の赤ん坊が自由に歩きだしたら、流石に気味が悪すぎるだろう。
今世では前世と同じ轍を踏まない為に、能力を少しセーブする方向へと俺は考えをシフトしたのだった。
これでトイレも自分で行ける!
食事も離乳食になった!
……それでも相当早いが、俺にだってプライドというものがある。
背に腹は代えられないし、これならギリギリあの天然な母親も誤魔かせるだろう。
また、魔法についても独学で上達した。
簡単な回復魔法や生活魔法くらいなら、見よう見真似で使えるようになった。
そして、歩けるようになって気付いた事だが、俺の瞳には魔法陣らしきものが浮かんでいた。
鏡で見た時“邪眼”の文字が俺の頭を過った……ますます中二病くさい仕様だ。
俺は鏡に映る自分の瞳に指をそわせた。
鏡の中の赤と金のオッドアイ幼児と、途端に視線が絡む。
鏡の中の幼児はひどく不満そうな顔をしていた。
そうしているうちにガチャっと、ドアが開く音がした。
母親が仕事から帰ってきたようだ。
「リュー君ただいま~。いい子にしてたぁ?」
柔らかい笑顔を浮かべた母親が、俺を抱き上げて言った。
最初のコメントを投稿しよう!