つかの間の平穏だと思ったが

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 結局、今日はあの二人がいなくて平穏な時間を過ごせると思っていたが、予想していた通りの時間は過ごせなかった。佐藤さんという人物と知り合うことができただけであった。  私から話しかけた人はもちろんだが、私に話しかけてくる人も、誰もかれもみな口をそろえて西園寺さんと雨水君のことばかりを聞いてきて、その返答にばかり気を取られていて、せっかく私に話しかけてきてもその話題だけで会話は終了してしまう。二人の話を聞き終わると、用が済んだとばかりに私から離れていく。    やっと、今日の授業が終わった。今日はもう寄り道せず、まっすぐ家に帰ろう。そう思って大学を出ようとしていたら、また佐藤さんが話しかけてきた。 「授業も終わったし、これから友達とケーキでも食べに行こうと思っているのだけど、良かったら蒼紗も一緒に行かないかしら。」  何とまだ私に用があるみたいだ。これ以上、二人について話すことはない。だが、前にも言った通り、私は人から誘われたり、頼まれたりすると、ついつい受けてしまう、典型的な日本人の性格を持ってしまっている。  今回も、特に家に帰る以外予定がなくて、家に帰っても特にやることはない。断る理由もすぐに思いつかなかったので、仕方なく一緒にケーキを食べることになった。私の時間を奪ったからにはそこのケーキはおいしくなければ、わりに合わない。
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