つかの間の平穏だと思ったが

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 彼女の友達は2人いた。一人は佐藤さんと同様パッとしない地味な女性で、もう一人はどちらかというと、派手目な女性で佐藤さんとは正反対な位置にいそうな女性である。いったいこの3人の関係は何なのだろう。  ケーキはまあまあだった。テレビや雑誌で取り上げられたことのある有名な店らしく、店内は平日であるにもかかわらず、店内の飲食スペースは混雑していた。 ここでもまた二人について話すことになった。本日何回目かわからない二人との出会いや関係性を延々と説明した。新たに加わった佐藤さんの友達が聞きたがったからだ。    西園寺さんたちの話をしながら、店内を見渡す。たくさんの人が店内にはいたのだが、そこでどこかで見たことのある小学生高学年ぐらいの男の子がわたしの前を通り過ぎた。その子は店内だというのに帽子をかぶっていた。さらに妙にダブダブした服を着ていた。丈の長いシャツを着ていて、ちょうどお尻が隠れるくらいの長さだった。  はて、私に小学生の知り合いなんていただろうか。まあ、ちょっと目立つ服装をしているだけでどこにでもいる小学生か。そう思ってまた3人の話の会話に戻ろうとしたが、あることに気が付いた。彼の目が金色だったことだ。    思い出した。塾の面接に行ったときにいた男の子だった。あの印象的な目は忘れられない。その子の目は金色で猫のような瞳だった。さらにその男の子で間違いがなければ、帽子と服で隠された場所には猫のような耳と尻尾が生えているはずだ。どうしてこんな場所にいるのか。この子供は他のひとにも見えているのか。 「ねえ、あそこにいる小学生ぐらいの男の子、あそこにいる金色の瞳をした丈の長いシャツを着た子なんだけど、どう思う。」  もし、瀧さんの言う通りなら、佐藤さんたちには姿が見えていないはずだ。そう思って、問いかけてみると、3人はそんな子供はどこにもいない、突然何を言い出すのかと、不審がられてしまった。  もう一度、店内を見渡してみた。男の子はすでに店内からいなくなっていた。その子のことが気になって気になって仕方がないので、3人との会話を適当に切り上げ、用事があるから先に帰ると告げ、店内をくまなく探してみた。しかし、その子供はすでにこの店から出てしまったのか、見つけることはできなかった。
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