つかの間の平穏だと思ったが

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 遅い朝食を食べ、家でのんびりと過ごす。ふと、天気予報がみたくなってテレビをつける。たまたまニュース番組がやっていた。ニュースでは最近の傷害事件について取り上げられていた。  その中で、見知った名前が出てきたので驚いた。うちの大学に入学して早々やめてしまった男子学生がテレビに映っていた。いったい何をやらかしたのだろう。「鈴木雷介」という名前で雷介なんて珍しい名前そうそうないのでたぶん彼だと思う。  顔は見たことがないのでわからないが、大学を辞めた時期と事件が起こった日と近いのでそうだろう。同姓同名の別人なんてことはないだろう。年も19歳となっていたので間違いない。    ニュースキャスターが彼について語る。彼はどうやら傷害事件を起こしたようだ。事件は深夜起こった。彼はその日、居酒屋でバイトをしていて、バイトが終わって帰宅しようとしていた。  その日は、バイトで失敗して店長に怒られてむしゃくしゃしていた。彼はたいそう機嫌が悪かった。そこへ酔っ払いが絡んできたらしい。そして、それが彼の怒りを爆発させてしまった。怒りに任せてその酔っ払いの男を殴ってしまったようだ。  男は頭の骨を折るほどの大怪我を負ったと報道されていた。頭や腹には殴られた跡があり、かなりひどく殴られたと男は供述している。殴られたという証言をした後、酔っ払いのみた幻覚だとしか思えないような供述が続いた。 「彼には頭に角のようなものが生えていた。あいつは鬼だ。私は鬼に殴られた。間違いない。私は鬼にやられた。」  まさか鬼なんているはずない。警察は彼が酒を飲んで酔っぱらっていたので、この証言については酔った男の妄言として特に問題にすることなく事件の詳細を調べているとのことだった。
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