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「ああ、ごめんごめん。この子のことが気に入っちゃってね、いろいろ話していたから遅れてしまったの。静流も朔夜のこと気に入ると思うよ。」
なんてことを言うのだろう。まるで私と話していて遅れてしまったと言っているようなものだ。話しかけてきたのはそっちで、しかも一方的に話していただけで、私は一言しか話していない。
「……。」
静流と呼ばれたイケメン学生が、私をじっと見つめてくる。ただでさえ、美男美女に囲まれて居心地が悪いのに、こうもじっと見つめられるとさらに悪い。加えて周囲の視線も針のように刺さっている。とりあえず何か話してみなくては。
「ええと。これから4年間同じ学科同士よろしくお願いします。それにしても西園寺さんもあなたも美男美女で何ともうらやましい……。性格は別として。」
思ったことを口に出してしまった。だがしかし、仕方のないことだ。人間、とっさに口から出る言葉は大抵の場合、心の声だと思う。おそらく今回もそういうことだろう。
「ふうん。確かになかなか面白そうな子ではあるが、そこまで気に入るほどか。」
イケメンにおもしろそうな子と言われてしまった。そして、私のことを値踏みするようにさらに見つめてくる。居心地悪くて仕方ない。だが、イケメンのいうことは間違っている。これでも私は周囲からおもしろみのない子として通っているのだ。それはそれでよいことではないが、おもしろい子認定されるのも嫌だ。
「おもしろくはありません。だいたい、あなたと西園寺さんの関係はなんですか。私はあなたたちと初対面のはずですが。」
大事なことを言ってやった。そもそも、初対面の相手に気に入る、おもしろいという発言はいささかおかしいと思う。すると突然、西園寺さんが私の発言を無視してまたもとんでも発言をかましだした。
「よく見るとあなた、可愛い顔よね。決めた、これは運命の出会い。今日から私と一緒に行動しなさい。」
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