見当たり捜査

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 この道20年のベテランこと阿南(あなみ)警部補は、眉間に深くシワを刻むと目を人の流れから離すことなく、文句を付ける。 「たく、ガキじゃあるまいし」 「ガキって……私、もう40で、妻も子供もいるんですけど」  「この分野においては、来たばかりの新米なんだよ。ガキ同然だ。ひよっこだ。あまちゃんだ」 「朝ドラかよ……」  聞こえないように小言を漏らすが、阿南警部補は耳を突き出し聞く。 「何か言ったか?」 「いえ、何も」  咳払いで誤魔化すと気を取り直す。  阿南警部補の注意は続く。 「いいか? 集中しろ。お前がまばたきした分だけ、犯人(ホシ)は逃げて行くんだ。そのつもりで見とけ……それが【見あたり】の極意だ」 「はい」
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