2人が本棚に入れています
本棚に追加
隣で風格を漂わせる阿南警部補は、見当たり歴20年のベテラン。
もうすぐ定年を向かえる老刑事だ。
噂では、1秒間に10人の顔を見比べられる技術を持っている。
あくまで噂なので、信憑性はないが。
しかしながら歳とは関係なく、昔かたぎの刑事で頑固な性格。
それゆえに、付いて行くだけで辛労が絶えない。
彼に付いて2ヶ月になるが、この老刑事との付き合い方に慣れず、手探りで彼との付き合い方を模索している。
私は叱咤されつつも見あたりの匠が、どのような目で物事を捉えているのか気になり、横目で彼の様子を見た。
「阿南さん…………まばたきしてますよね?」
阿南警部補は喉を鳴らして答える。
「俺はしてねぇよ」
「してましたよ」
見当たりのベテランは通行人から目を離さないまま、舌打ちをして返す。
「うるせぇなぁ~。まばたきしないと目が乾いちゃうだろが? てか、お前、俺の方を見るな」
「犯罪が逃げちゃいますもんね」
「そうだよ。解ってんじゃねぇか」
見あたりの刑事達は、ひたすら過ぎゆく人々に目を凝らし頭に叩き込んだ、指名手配犯の人相と照らし合わせる。
ホクロの位置。
唇の厚さ。
目の大きさ。
最初のコメントを投稿しよう!