見当たり捜査

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 隣で風格を漂わせる阿南警部補は、見当たり歴20年のベテラン。  もうすぐ定年を向かえる老刑事だ。  噂では、1秒間に10人の顔を見比べられる技術を持っている。  あくまで噂なので、信憑性はないが。  しかしながら歳とは関係なく、昔かたぎの刑事で頑固な性格。  それゆえに、付いて行くだけで辛労が絶えない。  彼に付いて2ヶ月になるが、この老刑事との付き合い方に慣れず、手探りで彼との付き合い方を模索している。  私は叱咤されつつも見あたりの匠が、どのような目で物事を捉えているのか気になり、横目で彼の様子を見た。 「阿南さん…………まばたきしてますよね?」  阿南警部補は喉を鳴らして答える。 「俺はしてねぇよ」 「してましたよ」  見当たりのベテランは通行人から目を離さないまま、舌打ちをして返す。 「うるせぇなぁ~。まばたきしないと目が乾いちゃうだろが? てか、お前、俺の方を見るな」 「犯罪(ホシ)が逃げちゃいますもんね」 「そうだよ。解ってんじゃねぇか」  見あたりの刑事達は、ひたすら過ぎゆく人々に目を凝らし頭に叩き込んだ、指名手配犯の人相と照らし合わせる。  ホクロの位置。  唇の厚さ。  目の大きさ。     
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