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これらの特徴を一瞬で見極め容疑者かどうか、判断せねばならない。
川のように流れる人々に、目をさらわれそうになりつつも、注意深く周辺を見る。
すると、ある一点に目線を奪われ釘付けになる。
潜めた声で警部補を呼ぶ。
「阿南さん。阿南さん!」
「見つけたのか?」
「1時の方向。見てください」
阿南警部補が、目線を移したのを見計らい言った。
「女優の『ぬん』ですよ? ほら、朝ドラに出てた、ぬんちゃん!」
思わぬ発見に小さく歓喜していると、老刑事は低く「おい!」唸るように言う。
こちらに目を向けた警部補は、厳しい眼光で咎める。
私は襟を正す。
「はい……犯人が逃げちゃいますね。すみません」
激が飛ぶことを恐れ、血相を変えて目線を人の流れに戻す。
たが、以外にも返って来た言葉は、
「俺も見てぇ。どこにいんだよ?」
「はい。自販機の辺りです」
私は即座に答える。
眉をつらせて、警部補は聞く。
「どこだよ」
「ほら、あそこ。あ! 行っちゃったなぁ……」
「適当こきやがって、本当にいたのか?」
阿南警部補は、落胆すると同時に舌打ちする。
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