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暫く、枝豆と冷や奴、追加のザワークラウトとモツ焼きをアテとして飲み続けた後、酔いが回ってきたのか、ようやく時輪氏は飲食以外で口を動かし始める。
「俺の研究は、未来予知なんて[ちゃちなもの]じゃない……」
そう言って、ホッピーの注がれたジョッキを煽る。
私は、彼が酒を飲み干し、次の言葉を紡ぎ出すのを、ビールを飲まずに固唾を飲んで待った。
そして、カラになったジョッキがドン! と音を立てて置かれ、奴と枝豆の皿が振動でずれたとき、時輪が語り出したものは、驚愕を通り越して突拍子のないものだった。
「……未来に行くための手段だ!」
「それって……タイムマシンでも作るつもりですか?」
私は、半分呆れながら訪ねるが、時輪氏は本気のようだ。
「俺は、[未来に行く]んだ……」
これは、持論ではあるが、タイムマシンは、過去に行くことで真価を発揮するものと思っている。もはや振り返ることすら出来ない[過去]を知り、あわよくば書き直すことで現在に干渉することさえ出来るものであると考えているのだ。
そして[確定した過去]と違い、[未来は不確定]である。ちょっとした行動でいくらでも分岐、変動する未来の情報など、当てになるものではない。
当然、実現すればと言う前提の話であるが……
確かに、氏の研究から生まれた〈未来予知プログラム〉は画期的な発明である。しかし、それは様々な確率論の総合研究であり、時空を超えるようなSF的なものではないはずである。
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