[近未来]への旅立ち

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 時輪氏の過去は知ることが出来た。  しかし、それだけだった。  肝心な時輪氏の現在、即ちその消息は依然不明である。  そもそも。警察が調べてもわからないことを、フリーライターが調べてわかるはずもなかった。  それにもし、時輪氏が本当に[10秒後の近未来]なるところに行ったとすれば、当然、追いつけるはずもないのだ。  それでも、手掛かりは残っていた。  それは、時輪氏が完成させたという、あの[物理方程式]である。  証拠品として押収されていた書類やデータ類が遺族に返却された後、私はそれを借り受け、友人の伝手を頼り、ある大学に解析を依頼したのだが…… 「書類の順番が不明すぎて、この[式]の何処が始まりで何処が結論なのか、それすらわからない。おそらく、解析にはこの[方程式]を完成させるまでに要した時間の、倍以上の時が必要だろう」  それでも、内容に興味を示したのか、書類は、預かってくれた。 「此処までくると、天才と云うより、狂気としか言えない」  その言葉を付け加えながら。  私自身、そう思っていた。
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