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時輪氏のすっかりと肉の落ちた頬を見る限り、普段からあまり飲み食いしていないことは明らかである。無論、彼のことだから、[式]を書くことに夢中になっていると言うこともあるのだろうが、結局のところ、食費を削っていることは間違いないと踏んだのだ。
そこを突き、私は彼を籠絡したと言っても良い。
その後、私は時輪氏を伴い、架線ガード下にある居酒屋に腰を下ろしていた。
ワザと古びた演出をしているのか、打ちっ放しのベニヤ板に古いポスターが貼られ、壁中に並んだメニューは全て煙で変色していた。
まずは喉を潤すべく、私は生ビールを、時輪氏はホッピーを注文する。
そう、ここからが、取材の本番である。
時輪氏は、酒が入ると饒舌になるのだ。
そしてようやく、この日は時輪氏が目指している真の研究目的と、その理由を聞き出すことに成功したのだ。
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