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「ツユリ君はさ、大丈夫かい?」
「…何の事でしょう…?」
「んー?草階くんのこと。
かなしそうにしていたから。」
改めて訊ねられ、困ってしまった。
奴の事は元から好きでもなんでもなかった。
ただの幼馴染、中々切り離せなかっただけの腐れ縁。
それ以上でもそれ以下でもなく…
いや、今は確実にそれ以下なのだが。
「……あれの事は…
全然、好きではなかったんですよ…?」
「うん。」
「それに……早く、面倒な縁を切ってしまいたかった、とも…。」
「うん…、そうだろうねえ。」
「それでも……」
「うん。」
「それでも……、萼さんに…
あんな事を言うような奴だとは思っていなかった、ですし……
どうでもいい、筈、でしたけど……
でも……無視を…するつもりも…なかったのに……
こんな、どうして、こんな風に、なってしまったんだろうか、と……。」
「……よしよし…。」
萼さんが、俺の腰に回していた腕に少し力を入れる。
まるで後ろから抱きすくめられているようだ。
眼鏡が無いので視界がふやけて良く見えないが、湯の水面に、ぽちゃり、ぽちゃりと断続的に小さな波紋がいくつも出来た。
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