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幼い兄妹の去ったあと、魔女は庭先で泣いていました。白いきれいな鳥が歌いながら、魔女の気分と対をなしているかのように飛びまわっていました。
「あんなにちいさくても、やっぱり人間には変わりないのね……」
やがて、魔女の目の前に白い鳥が降りたって、すぐにまた、ばさっという音をたてて飛んでいきました。その影を追うように魔女が顔をあげると、
「あなたたち……」
さきほどの幼い兄妹、ヘンゼルとグレーテルが立っていました。
魔女はよろこんで、ふたりをお菓子の小屋のなかへ招待して、お菓子をふるまいました。
ヘンゼルとグレーテルは、魔女に言い訳をしました。
「ごめんなさい、さっきはびっくりしたものだから」
きれいな魔女は笑ってゆるし、
「いいのよ。こうして戻ってきてくれてうれしいわ」
「お姉さんは、悪い人じゃないって思ったから」
上目づかいの幼子たちに、気分もいっそう楽しくなりました。
「ねえお姉さん、どうしたらそんなに、きれいになれるの?」
「まあ、おじょうずね」
「ねえお姉さん、私もきれいになれるかしら」
「ええ、きっとなれるわ」
「ねえお姉さん、それなら僕も、ハンサムになれるかな」
「ええ、もちろんよ」
「もしそうなったら、僕と結婚してくれる?」
「あらまあ、そんな」
三人は楽しい午後を過ごしました。
そして、夕方になり、
「僕たち、泊まっていってもいいかなあ」
「おひさまが沈んじゃって、お家に帰れないわ」
魔女はすこし困ってしまいましたが、それでもこころよくこれを受けいれました。
グレーテルはひとつ、魔女に約束を取りつけました。
「お姉さん、明日は私たちに、お菓子作りを教えてくださる?」
「いいことよ。けれど、また遅くならないうちにお帰んなさいね」
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