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幼いけなげな勇者たちは、魔女をかまどへ閉じこめて焼き殺してしまいました。
「やったわ、兄さん」
「よかったよ、グレーテル」
ふたりはおおよろこびで抱きあって、互いの無事と勝利とを祝福しました。
「ところでグレーテル、目的を忘れてはいけないよ」
「ええ、もちろん覚えているわ」
ふたりは魔女の城をくまなく物色し、金目のもの ―― 宝石やきれいな真珠 ―― を集めては前かけにかかえました。
「けっこうな収穫ね。でも兄さん、ばちが当たらないかしら」
「かまうもんか、グレーテル。僕らは英雄になったんだよ」
宝物をたずさえたヘンゼルとグレーテルは、意気揚々と家を目指して歩きはじめました。途中、鴨の背に乗って川をわたり、お礼にすこしだけ真珠をわけてやりました。
「ほんとうに、いいのかい?」
「ええ。私たちうんととってきたものだから、持って帰るのがたいへんなくらいですもの」
「ありがとう、勇者さんがた」
家へ着くと、やつれたきこりがふたりを出迎えました。
「ヘンゼルと、グレーテルかい……」
「お父さま……」
三人は涙をこぼして抱きあいました。
「ごめんよ、ひどいことをして」
「ううん、これからは一緒に、いつまでもいつまでも、しあわせに暮らしましょうね」
ひとしきり泣いて親子の再会をよろこんだあと、きこりは子供たちの前かけからこぼれた宝物の山を見て驚いて、いっそう泣いてよろこびました。
ところで、きこりの妻はすでにこの世の人ではなかったので、魔女退治の英雄ヘンゼルとグレーテルは、この父親と三人でしあわせに暮らし、父の死後は都会へ移り、数々の慈善事業でさらに名声を高めて世の人にしたわれ、天命をまっとうしてこの世を去ったのでした。
そのあとのことは ――、のこされた人間には、うかがい知ることはできません。
(おしまい)
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