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こうして第一の危機を乗り越えたヘンゼルとグレーテルでしたが、第二の危機はすぐにやってきました。
「ろくでなしの夜更かしめ、きたないったらありゃしない。あたくしたちの睦言に耳をそばだてていたなんて」
「それは違うさ。たまたまトイレへ起きて、廊下を通ったときに聞こえただけさ」
「あらまあ、あなたはお人好しなのね。まるで、庶民の暮らしぶりなどなにも知らないくせに、『あの人たちは善良なのだわ』と決めつけて夢を見ているお嬢さんみたいだわ」
きこりの妻はふたたび夫をけしかけて、こんどは森の奥深くに、無理矢理にでも子供たちを置き去りにすることにしたのでした。
「しょせんは子供。奥まで行けば歩きつかれて、帰ろうにもついてこられなくなります」
ところで、こんどは妹のグレーテルが起きていて、この会話を聞いていました。これは偶然ではなく、このけなげな女の子が、「次こそは自分が」と勇みたち、毎夜毎夜、両親の閨の戸に張りついては機会をうかがっていたのでした。
というのも、第一の危機が兄妹をみまったとき、兄のヘンゼルは年下のグレーテルを気遣って、ぎりぎりまでふた親のたくらみを明かさずにいたのでした。しかし、けなげな妹はこれをひじょうに残念がって、「兄さんずるい、それって抜けがけね」と言って悔しがっていたのでした。
そんなわけで、こんどの危機をヘンゼルが知ったのは翌日の朝、ふた親に起こされて、先の日と同じように「森へ行こう」と声をかけられたそのときだったのでした。
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