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子供たちをつれて森の奥地へたどり着いたきこりとその妻は、思いのほか兄妹の足腰が丈夫だったことにおどろき、即席で落とし穴をこしらえ、ふたりの子供を落っことして帰っていきました。
「悪いわね、子供たち。でもね、わかっていたはずです。あなたたちはお利口だったもの……、あたくしに似て」
最後に聞いた母親の声は思いのほか優しく、温かな情に満ちていたように、兄のヘンゼルには思えました。
グレーテルはというと、これからの冒険に胸を躍らせていてそれどころではありませんでしたが、
「餞別ですよ」
そう言って母親の投げ入れたザクロの実を真っ赤なのを見ると、途端にもろい、少女らしい感情が湧きあがってきて、涙を流しました。
ところが、ふた親が去ってしまったあと、グレーテルがそれに口をつけようとすると、
「だめだよ、グレーテル」
兄が食べさせてはくれませんでした。
「ザクロを食べたら、僕らはもう二度と穴の外へは出られなくなる」
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