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ヘンゼルの言うとおり、投げ入れられたザクロには蛇の毒がしくまれていて、食べれば落とし穴から出ることもかなわずたちまちに泡を吹いて死んでしまうという、おそるべき代物でした。
「ああ、これで……、これで……」
帰り道、白い両手をこすりながら、きこりの妻は言いました。
「これで良かった……、だろう」
低く、きこりがこたえます。
「そうよ、これで……、これで……、あの子たちは今ごろ、毒入りのザクロを食べて、死んでしまっているわ。これでようやく、よ……」
きこり夫婦は立ちどまりました。目の前にはおおきな湖があって、静かにゆれるその水面には真っ赤な夕日が映っていました。
「母さんは知らないだろうが……」
きこりはゆっくり、言いました。
「この森には、おそろしい魔女が住んでいる ―― そういううわさだ。生きていようが死んでいようが……、子供たちのからだは、その魔女の真っ黒な牙におかされてしまうだろうよ」
きこりの妻は、夫を見ました。―― きこりには、ひどくやつれたその顔が醜い怪物のようにさえ思われて、我慢がなりませんでした。
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