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勝利と栄光の風にみちびかれて、けなげな勇者たちは魔女の城へとたどりつきました。
「兄さん、着いたわね」
「うん。これでお母さんとお父さんを笑顔にしてあげられるよ」
城といっても、それはちいさな小屋で、ちょうどこの幼い兄妹がふた親と暮らしていた家のおおきさと変わらないくらいでした。
ヘンゼルとグレーテルは、しかしやっぱり子供でした。
「ねえ兄さん、なんだかいい匂いがしない?」
「うん。どうやらあのお城は、あまあいお菓子でできているらしいよ」
ふたりは小屋へかけよると、お互いに顔を見あわせて、「いただきます」と言いました。
「けっこうなお昼ね。でも兄さん、ばちが当たらないかしら」
「かまうもんか、グレーテル。たあんとごちそうになろうよ」
兄のヘンゼルは、ピーナッツやピスタチオの埋めこまれたクッキーの屋根へ、妹のグレーテルは、干したイチジクやレーズンの光るお砂糖の窓へ、ここにきた目的も燃えさかるヒロイズムも忘れてしまい、夢中でかじりつきました。
そこへ、部屋のなかからひとりのきれいな女の人が出てきて言いました。
「まあ、だれなの、あなたたちは」
ヘンゼルとグレーテルは、とたんに青ざめました。
「ま、魔女だあ」
「兄さん、助けてっ」
魔女は悲しそうな顔をして言いました。
「あなたたちは、人間ね。そう、私の魔法を気味わるがって、いつも目の敵にする……」
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