議題・その1

2/4
前へ
/14ページ
次へ
  「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」ということわざを知っているだろうか。  美しい花を用い、所作が麗しい女性を形容した言葉だ。  中々、そんな女性はいないと思う。でも、僕の学校の生徒会長である春日園伶華(かすがぞのれいか)さんはその言葉がぴったりしっくりくる存在だった。  高校二年生にして162センチ。すらっとした肢体。白い肌。長くて美しい髪。吸い込まれそうな漆黒の双眸。形の整った柳眉に、はっきりとした二重。筋の通った鼻の、紅口白牙。どこを切り取っても、テレビに出ている芸能人なんて目じゃないくらいに美しい。その上、学力は学年一位で、常にトップの英明という才色兼備。それが春日園伶華さんだった。  廊下で学生たちとすれ違えば、男子だけではなく女子からまでキャーキャー騒がれるほどのカリスマ。僕は生徒会庶務をやっているため、そんな伶華さんの後ろを着いて回るのだが、まるで僕がキャーキャー言われているかのように錯覚してしまうほどの人気ぶりなのだ。  だから、そんな方と一緒に生徒会の仕事ができる僕は恵まれている。僥倖なのだ。事実、生徒会に入りたい奴は、未だにごまんといる。だから、僕は幸せなのだ。 「ねぇ、墨東」  急に僕の名前(正確には苗字)が呼ばれた。  他の生徒会の方々(副会長、書記、会計)が居なくなった生徒会室で、僕は会長と二人で書類整理をしていた。先ほど、生徒会会議が終わり、可決された内容の書類にハンコを押していたのだ。 「はい……なんでしょうかね……」 「ポ〇チンのポコってなにかしらね?」  もう一度言う。春日園伶華さんは、この学校で生徒会長を務めており、二学年の学力トップに君臨するトップオブザトップだ。  何言ってんだこの人は。 「チ〇ポコを逆さまにしただけ? 銀座をザギン、寿司をシースーとか言っちゃうアレみたいに? バブリーなの?」 「グー〇ル先生に聞いてみてはいかがでしょうか?」 「ねぇ、墨東」  伶華さんは机の上に肘をついて、手を組みながらこちらを見る。丁度アレだ。エヴァンゲリ〇ンの碇ゲン〇ウみたいな格好だ。  伶華さんのブラックホールみたいな瞳が、僕を射抜いた。やっちまったぜ。そんな思いが僕の中で渦巻いた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加