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「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」ということわざを知っているだろうか。
美しい花を用い、所作が麗しい女性を形容した言葉だ。
中々、そんな女性はいないと思う。でも、僕の学校の生徒会長である春日園伶華(かすがぞのれいか)さんはその言葉がぴったりしっくりくる存在だった。
高校二年生にして162センチ。すらっとした肢体。白い肌。長くて美しい髪。吸い込まれそうな漆黒の双眸。形の整った柳眉に、はっきりとした二重。筋の通った鼻の、紅口白牙。どこを切り取っても、テレビに出ている芸能人なんて目じゃないくらいに美しい。その上、学力は学年一位で、常にトップの英明という才色兼備。それが春日園伶華さんだった。
廊下で学生たちとすれ違えば、男子だけではなく女子からまでキャーキャー騒がれるほどのカリスマ。僕は生徒会庶務をやっているため、そんな伶華さんの後ろを着いて回るのだが、まるで僕がキャーキャー言われているかのように錯覚してしまうほどの人気ぶりなのだ。
だから、そんな方と一緒に生徒会の仕事ができる僕は恵まれている。僥倖なのだ。事実、生徒会に入りたい奴は、未だにごまんといる。だから、僕は幸せなのだ。
「ねぇ、墨東」
急に僕の名前(正確には苗字)が呼ばれた。
他の生徒会の方々(副会長、書記、会計)が居なくなった生徒会室で、僕は会長と二人で書類整理をしていた。先ほど、生徒会会議が終わり、可決された内容の書類にハンコを押していたのだ。
「はい……なんでしょうかね……」
「ポ〇チンのポコってなにかしらね?」
もう一度言う。春日園伶華さんは、この学校で生徒会長を務めており、二学年の学力トップに君臨するトップオブザトップだ。
何言ってんだこの人は。
「チ〇ポコを逆さまにしただけ? 銀座をザギン、寿司をシースーとか言っちゃうアレみたいに? バブリーなの?」
「グー〇ル先生に聞いてみてはいかがでしょうか?」
「ねぇ、墨東」
伶華さんは机の上に肘をついて、手を組みながらこちらを見る。丁度アレだ。エヴァンゲリ〇ンの碇ゲン〇ウみたいな格好だ。
伶華さんのブラックホールみたいな瞳が、僕を射抜いた。やっちまったぜ。そんな思いが僕の中で渦巻いた。
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