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「入れ込み過ぎじゃないっすか」
トップさんが苦笑いすると侠胆さんは降参するように両手を上げた。
「悪い悪い。まさか携帯の電源が切れているとは……」
「野武士みたいな雰囲気だったね」
「ま、まあ、ある意味で初っ端からカマしてやったとも考えれば」
FLMさんに俺が続けると侠胆さんは呵呵大笑。
「ハッハッハ。悪い。まあちょっと気合が空回ってたわ……」
「やっぱあいつが出るから?」
「?何のことだ」
言葉とは裏腹に侠胆さんは表情をこわばらせた。
「侠胆さん、顔に出てます」
「鋼巨なんて全然、気にも留めてないから」
「そんなツンデレ女子高生みたいな態度とられても……」
プイとそっぽを向く侠胆さん(45)にトップさんはため息を吐いた。鋼巨と言うのは最近、界隈で頭角を現して来ている若いMCだった。言葉に対するスタンスの違いで酔虎殿とは険悪な仲で知られている。
「ま、心配すんな」
侠胆さんが真剣な面持ちで立ち上がった。
「日陰者の意地って奴をカマしてやるからまあ見とけ」
そう言って俺達の胸を小突いた。
「最近、気になる女がいる」
俺様が囁くと売人の劉は金を数える手を止めずに視線を上げた。
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