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「どうしたのよ。大丈夫?またゲームに憑りつかれてるの」
少し冗談交じりのその言葉に私は相好を崩した。
「ううん違うよ。ちょっと考え事」
思えば彼女とは長い付き合いだが劇的なきっかけなど特になく、なんとなくで今日まで付き合いが続いている。対して彼に対する興味の発生はなんと衝撃的でエキセントリックな物だろうか。
李緒と話しながら自然と彼に視線が引き寄せられた。
彼はこちらなど気にも留めないようで膝の上に鞄を乗せたまま瞼を閉じている。眠っている様子はなく背筋の伸びた佇まいはどこか静謐な修行僧の趣さえあった。端正な顔立ちをしており、掛けた眼鏡が理知的な雰囲気を醸し出している。
だがそんなものはどうでもいい。
そんなものに私は興味を抱いたりしない。
問題はその下だ。
「じゃあ、もしかして」
どこか楽しそうな李緒の声に私は視線を彼女に戻した。
「誰か、気になるオトコができたとか」
ビシッと人差し指を立てた彼女に即答した。
「違うよ」
そう違う。マジで。
同世代の少女たちよりもその手の感情に疎い自分でも分かる。これは恋ではない。
彼のその姿を一目見た瞬間から雷に打たれたように産毛が逆立った。
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