stir

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 先月まではディスなんて言葉使った事も無かった癖にと、覚えたての言葉を使う彼女の浅薄さに何故か微かな愛おしさが芽生えた。 「何笑ってるのよ」 「李緒はカワイイなって」  私が言うと李緒は絶句した。その隙に断りの言葉を告げる。 「折角だけど、男社会が根強くて未だにミソジニー発言が横行する遊びはどう考えても私には合わないから遠慮させて」 「だから……、偏見が凄いなぁ」  そこでアナウンスが流れた。学校の最寄駅に到着したのだ。 「そう言えばイベントにまで行くなんて李緒、いつになく本気だね?」 「……実はちょっぴり気になる人がいて」  頬を微かに朱に染めた彼女は一目ぼれした男について滔々と語りだした。真面目な少女が不良に惹かれることなどよくあることなのかもしれないが私の耳にそれは入ってこなかった。私の脳裏にはただ一言『ブルータス、お前もか』と。  まあ尤も、私と彼女では気になるのベクトルが異なるのかも知れないが。  どちらにせよ彼女が幸せな結果を迎えられることを願うばかりだ。  各駅停車に揺られながら瞑目していると耳に電車のアナウンスが届いた。学校のある駅に到着したらしい。     
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