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当時県南の地区大会は二日、場合によっては三日かかることもあり、初日は県の公共施設である運動公園が会場だった。しかし二日目以降はM中の体育館を借りていた。必ず会場に指定されていたその学校には、第一体育館と第二体育館があり、両方を行き来する渡り廊下が一番涼しかった。コートを八面張れる第一体育館に対して、第二体育館は三面のみの面積しかなく、大抵シングルスの試合が割り当てられた。
私は既に昨日の大会初日にして二回戦目でなすすべなく敗退していたので、二日目は勝ち残っている他の部員を応援するためだけにここにいた。部員の試合時には応援へ向かうが、正直うちの学校は、女子は強豪とは呼べないレベルであることがほぼ二日分の試合を見てきた結果、何となくわかってきていたし、当然のように敗退する選手は増えていく。ダブルスでベスト8まで残った先輩ペアも次の試合で敗退、シングルスで残っていた先輩はベスト16という結果だった。ただ、部は強豪とは呼べなくても、ベスト16まで進んだ唯一の同級生、つまり一年がいて、部内では驚きや嬉しさの混じった空気に包まれていた。彼女も試合に負けた後泣きながら頭からタオルをかぶり、部員の荷物置き場にしていた階段の踊り場にうずくまっていた。中学に上がる前からバドミントンを経験しており、お姉さんは何年か前の県大会優勝者だとの噂があった。実際に本人がそう口にしていたのも耳にしている。
要するに早い者勝ちなのだな、と私は思っていた。中学に入学するよりももっと前にバドミントンを始めていれば、もっと上達が早くて今回の大会でもっと勝つことができたかもしれないし、もう一年経ったら今度は大体の新入生よりは経験があるから勝つ可能性が高くなるのだろう。グリップを握るのも、切れたガットの張替えへスポーツショップへ行かなければならないことも、素振りやフットワークを繰り返しやって覚えることも、今年の四月が全て初めてだった。何でもかんでもスタートダッシュさえ早ければ他よりもリードができる。リードができるということは強いということ。ただそれだけのことなのだ。
渡り廊下を吹き抜ける温い風がジャージからはみ出したひじや膝にまとわりつく。昨日と違い、今日は運動すらしていないのに手足にうっすらと汗の膜がはりついている。何となく小さい方の第二体育館に足を踏み入れると、女子シングルスの試合が行われていた。
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