意志

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「はぁ・・・」石田は深い深い。ため息をついた。中学3年生の夏も終盤、8月20日明日の登校日に提出の課題にほとんど手をつけていなかった石田は夏の夜のまとわりつくような不快不快で満たされた自室で1人課題に励んでいた。もう嫌だ。もう嫌だ。自分の怠惰を憎む石田に希望など無かった。暑さと焦りでいっぱいになった不快な空間。石田を深い眠りに誘ってくる睡魔と石田は戦っていた。額に書いた汗が課題にポタっと1粒落ちた。石田はその光景に無性に苛立ちを覚えた。壁にかけてある暗い茶色の時計を見る。「2時か・・・」よし諦めよう。吹っ切れた石田は真夜中の町に繰り出そうと家のドアをそっと開けて家から出た。さあ、どこに行こうかと考えていたその刹那。石田の目の前には大きな看板がかけられたいかにも老舗と言った感じの店が構えてあった。看板には漬け物と書いてあった。石田は最初自分が狂ったのではないかと疑い。1度家に入り深呼吸してもう一度外に出た。あぁ、今日の深夜の街に繰り出す青春ごっこはやめよう。そう思ったが石田の好奇心は旺盛だった。目の前の漬け物屋の扉を開けた。ガラガラと大きな音が鳴った。「いらっしゃい・・・ようこそ。漬け物店へ」そこには座っているおばあさんがいた。白髪を生やした優しそうな老婆だった。「俺、課題が・・・」老婆を見て石田は開口一番に言った。それが何故かは全くわからない漬物屋で何をしているのかとも思うが、石田は直感でこの老婆に言えばなにか救われると思ったのだった。「そうなのかい・・・」と老婆は優しい声音で言った。「君は深夜漬けで課題を終わらせようとしたけど諦めたんだね。」と言った。「君には深夜漬けの意志が足りないねぇ、これをあげよう」そう言って老婆はいちごくらいの大きさの石がついたペンダントを渡してきた「それは、漬け物意志と言って深夜漬けだとかの意志を強固にしてくれるんだよ。」老婆は言った。石田はオカルトはあまり信じない方だがこの老婆は何故か信じられた「ありがとう」石田はそのペンダントを首にかけ扉を開ける。「またおいで。」老婆は言った。石田は家に帰ると怠惰にも布団に入った。老婆は笑った「漬物石ってのは言わば漬物を閉じ込めるものなんだよぉ。」「あの子の怠惰という憑け物は閉じこめられたまま。」「あの子はこれからも怠惰に生きていくんだろうねぇ。」老婆は1人店の中で笑った。石田の行方は誰も知らない。
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