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バレエ教室に通う北条恵は、17歳の女子高生。夢はプリマドンナになること。学校帰りにバレエ教室に入ると、幼馴染みの影山千夏が練習している。彼女は、白鳥の湖の主役、オデット姫に抜擢された。いつも、主役になれない恵にとっては憧れのプリマドンナである。
「千夏ちゃん、綺麗だし、踊りも上手だし。羨ましいな」
1ヶ月後、公演を控えたある日、千夏はバレエ教室に自転車で向かう途中で交通事故に遭ってしまう。即死だった。
その知らせを聞いた恵は嘆き悲しむ。
「千夏、主役で踊れることを楽しみにしていたのに!神様のいじわる!」
数日後、やっと立ち直れた恵は、夜になって、誰もいないバレエ教室に入った。恵はトウシューズを履いて踊ろうとすると、背後から物音がした。そっと振り向くと、くるくると回転する女性の姿が見えた。
「こんな時間に誰?」
よく見るといないばずの千夏だった。トウシューズの音が部屋中に鳴り響いた。
「千夏?どうしてここにいるの?」
「練習しなくちゃ、もうすぐ公演でしょう」
「あなた、もう…」
「そうよね、幽霊じゃ出られないわね」
「…」
「いい気味だと思っているんでしょう?恵も上手いものね、主役になったそうね」
「何言ってるのよ、私は千夏がいたからバレエを続けられたのよ!例え、プリマドンナになれても嬉しくないわ」
「そうね、私はもうこの世の人間ではないのよ!練習しても舞台に立つことは出来ないのよ!」
千夏の目からは大粒の涙がこぼれていた。
「千夏、一緒に舞台に立とう!」
「何馬鹿なこと言ってるのよ!そんなこと出来るわけないでしょう」
「私の体に入って!そして舞台で最高の演技を見せてよ」
「恵…」
千夏の魂は、恵の体の中に入っていった。
公演当日、恵の体に入った千夏は、最高の演技を披露した。客席からは絶賛の嵐が舞い込んでいた。
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