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トパーズ
祖母の家にある、天にまで届きそうな銀杏の木を、あの人に見せてあげたいと思った。
◇
幸生は、クラスでかなり浮いている。
一人でいることも多い。
じゃあ、まったく友だちがいないのかというと、そうでもない。
ときどき、なかの良さそうな男子にじゃれつかれたりしている。
私が観察したところ、彼の方から友人にじゃれついていくようなことはない。
だいたい、彼に「じゃれつく」という文字は似合わない。
幸生は、あのおばあちゃんの庭に、一本ニョッキリと立つ、銀杏の木に似ている。
お日様が似合って、背が高くて、そして穏やかだ。
「幸生ぉ? オタクじゃなぁい?」
よく一緒にいる女の子たちの、幸生への評価である。
オタクと言っても、引きこもってゲームとか漫画などを読んでるというわけではない。幸生は休み時間ともなれば、まず間違いなく外にいる。
彼を探したければ、校庭の隅の花壇に行けばいい。
毎朝毎夕水をやり、綺麗なお花を育てている。
自宅でもたくさんの植物を育てているらしく、時折、花屋で買ったのではないか? というような立派な花を「自分で育てたので」といって、教室に飾っていたりする。
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