67人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、友達ともつるまず、休み時間になると花壇に直行するやつなんて、いるだろうか?
絶滅危惧種っていうのは、もともとたくさんいたのが少なくなった種ってことだから、幸生の場合はなんだろう。希少種? もしくは高校生男子の突然変異体かも知れない。
頭もそこそこ良かったし、運動もできたし、いじめられたりするようなことはなかったけれど、確かに友達は少ない。
まあそれは、私にとっては好都合なのだ。
だって、誰にも邪魔されずに幸生ウォッチングができる。
毎日毎日、雨の日以外は、窓の桟にもたれかかって、幸生を見つめる。
なのに、だ。
世の中にはどうして夏休みなんてものがあるのだろうか。
人生で初めて、私はそう思った。
こんなに長い間、幸生を見ることが出来ないだなんて。
私は冷たいフローリングに寝っ転がったり、ソーダ味のアイスバーを舐めたりしながら、幸生のことを考える。
あのチョコレート色の大きな筋張った手で、今日もお花の世話をしているのだろうか。光にとけてしまいそうな、サラサラの髪は、汗に湿っているだろうか? 帽子をちゃんとかぶっているだろうか。
ああ、帽子をかぶるなら麦わら帽子がいいわ。
最初のコメントを投稿しよう!