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寮に向かう途中、ある顔がふと脳裏をよぎった。
────上条、古典文法…全然わかんない……
────解けた…解けたぞ上条!
────上条、ご飯出来たけど
────お、美味しい…?あ…ありが、と…
困った顔、嬉しそうな顔、笑顔、照れた顔。
初めて話した頃は怒ってる顔か、泣きそうな顔しかしなかったのに。
最近は色々な表情を見せてくれるようになったなと思う。
いやいや…だからなんだっていうんだ。
俺に一切媚びを売らない……親衛隊の奴らとは違うってだけだろ…
ぼんやりと歩きながら考えていたら、気づいたらあいつの部屋の前まで来てしまっていた。
最近では毎日来ていたのに、連絡のひとつも無しに自室にも帰れない。だがもうこんな時間か…いつもよりもだいぶ遅くなった。
あいつ、怒ってる…かもな。
意外と短気だからな、あいつは。
はあ…機嫌、どうやって取るかな…
……は?
なんで俺はあいつの機嫌なんか気にしているんだ…
あいつが怒ってようと、笑ってようと、俺には関係無いはず……
「───買い物にでも行く!」
中に入るか悩んでいたら部屋の中から大声が聞こえて、同時に部屋の扉が開いた。
「う、うわああぁぁ!?……か、上条!?」
📃📃📃📃📃📃
外に出ようと部屋の扉を開けた瞬間、目の前に上条が立っていてめちゃくちゃ驚いた。
お、大声出しちゃったし…他の部屋にも聞こえたかな…どうしよう……
「………みなと」
「か、上条?どうかしたのか?」
「…………」
「上条?上条?なんか今日…変だぞ」
ぼんやりと立ってる……何も言わずに…
なんかいつもより顔に迫力もないし、特に眼力がないというか…
ぽやぁ〜っとしてるっていうか……
あれ、これはもしかして…
「上条……熱、ある?」
「……………ん」
「ん、じゃないよ!早くほら、入って!寝て!」
いつもあんなにハキハキ喋ってる上条がこれしか声を発さないなんて……もしかして、超重症…!?
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