11月 教科書忘れた

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教科書ないとわりとどうにもならない授業多いから本気で悩む。 教科書内の問題をその場で解け、なんて良くあることだし。 朝香先生の授業だったらめちゃくちゃ怒られていじめられる。 どうしよう……。 教科書のことを悩んでたから、教室のドアがガラリと音を立てて開けられたことには気づかなかった。 気づいた生徒はみんな息を飲んで、教室に入ってきた人物を見ていた。 俺とみーくん以外のクラスメイトの視線を浴びながら、その人物は真っ直ぐ自分の席へと向かう。 突然、隣から椅子を引く音が聞こえて驚いた。 普段だったら聞こえるはずのない音に、恐る恐る目を向けると、この教室内では珍しい顔。 そう、ついこの間の選挙で我が学園の生徒会長に輝いた、上条(かみじょう)征司(せいじ)。 ちなみに俺が見たことある顔は全部しかめっ面。笑ってる顔どころか微笑んでるところすら見たことがない。こんな顔しかしてないのに、なんで人気あるんだろう? 「みなと」 「……え?」 急にみーくんに声をかけられ、上条に向けていた視線をみーくんに戻す。 「ふぁいと」 「……えっ!?」 それだけ言ってみーくんは自分の席に戻ってしまった。 もしかして、俺が教科書を見せてもらうお願いするのを応援してくれてる、の? 嫌だなぁ怖いなぁ…… なんか勝手なイメージだけど、話しかけるだけで睨まれそう。 本当にこんなやつのどこが良くて、みんなこいつのこと好きなんだろう……。俺には全然分からない。 でも授業開始まであと2分。 迷ってる暇はない。 ええい! 「な、なあ、かっ、上条……」 「…なんだ」 まさか俺に話しかけられるとは思っていなかっただろう上条は、少し驚いた顔をしたあと直ぐにいつものしかめっ面に戻って、こっちを睨みつけてくる。 うわぁ……こわい顔…… 「えっと……上条さ、その…教科書、とか、持ってる?」 「当たり前だろ。俺が教科書も持ってこないで授業を受ける馬鹿だとでも思ってんのか?」 「いや、その…そうじゃなくて……俺に教科書を、見せて…くれたらなって……」 「……は?」 ううう、こわい。やっぱ上条こわい! 機嫌悪いのか知らないけどなんかめっちゃ怖いし! 目付きがキツすぎる!こわい! なんで俺今日に限って教科書忘れたんだろ… いつもだったら上条教室来ないのに!
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