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背筋がぞっとした言いました。井戸の中に女と思しき人がいたんです。しかし目はなく空洞で、唇も無くて歯がむき出しになっていたそうです。その口をぱっくり開けて、一目で生きた人ではないと思ったと言います。
長い髪に水に濡れたボロボロの衣服、酷い臭いがしたそうです。
その女が苦しそうに呻きをあげながら、井戸の壁をひっかいていたそうです。
友人とA君は一目散にその場から逃げました。
息も切れるまで走ってから、友人が見えたか? と聞いてきたので自分にも見えたと言いました。やっぱり友人が見たのも目と唇のない女だったそうです
二人とも恐怖に震えながら家に帰ったそうです。
その井戸には海の底にある良くないものが流れ着いてしまうのだそうです。女に目がなく唇もなかったのはたぶん魚が食べてしまったからではないのかとA君は言いました。
魚は水死体がでると、まず柔らかい目と唇から食べるんだそうです。A君の住む町の沖合では時々水死体が上がるのだと。
ほどなくして井戸は埋められ、今ではその公園もすっかり近代化して、昔の面影はもうないそうです。でも、A君は今でも井戸は怖いと言っていました。
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