監督の思い

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いよいよオリンピックが1年後に迫った秋の全日本チームの合宿が開始されるときの初日の練習前のミーティングで、監督から選手の皆に話があった。 「体力、バレーの基本、連携プレーについて、皆さんは世界と互角に戦えるだけの力をつけたと思っています。  いよいよ最後の総仕上げです。  今後は、他国チームの分析と戦略を考えた練習をしなければなりません。」 監督がこう話すと、世界の主力国チームの資料が配布された。 この資料には、他国選手1人ひとりの特徴として得意とすることと欠点、選手1人ひとりのサーブ、ブロック、レシーブ、トス、アタックの成功率、各国選手全員の成功率の平均値がまとめられていた。 また、試合のビデオ映像を見ることも行われた。 この資料とビデオ映像を基に、ミーティングが頻繁に行われるようになった。 他国選手1人ひとりについて、日本チームとしてどのように対処したらいいのか、監督、コーチ、選手全員で話し合いが行われたが、最終的には選手自身で答えを出すように指示が出た。 中国のスパイカーC選手の場合、ブラジルのスパイカーB選手の場合、アメリカのスパイカーA選手の場合、ロシアのスパイカーR選手の場合といったように対策が話し合われて練習が行われた。 対策がうまく機能しない場合には、ミーティングで代替え案が話し合われて練習するということが繰り返された。 対策はパターン化されて、時間をかけた練習で選手たちの頭と体に叩き込まれた。 この頃には、監督、コーチ、選手皆が志を1つにして、オリンピックで金メダルを取るという目標に向かって進んでいるという感じがした。 練習は、とても大変だったけれど、私は、とても充実した時間を過ごしていた。
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