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男の隣の席に並べた。
男は普段は見せない笑みを源次郎に向けた。
そして少なめに注いだ、
わかめとたまねぎの赤だし味噌汁を手近な場所にそっと置いた。
キャベツ大盛の野菜サラダをその隣に置くと、男は、
「今日はフレンチで」と言うと、
源次郎は冷蔵庫から小洒落た容器に入ったフレンチドレッシングを取り出し、
サラダの隣に置いた。
この男の食は底がない。
今日はさらに拍車がかかっている。
だが、5杯目のお代わりをして、しばらくしてから箸を止めた。
「今日が、最高の食事をした気分だ。
子供の頃に、食べたかったよな…」
男は感慨深く言った。
「トンカツが美味い事もありますが、
それにしても食欲旺盛でしたね」
「ああ。
マラソンが三件と大立ち回りが二件あったからな」
「まさか、昼から何も?」
「ああ、そうだ。
飯を食っている時間が惜しいからな」
この男の職業は警察官で、警視庁の警部だ。
名前を皇一輝という。
一輝は必ずこの時間まで仕事に明け暮れている。
この時間帯にだけ開いているこの道すがら食堂が気に入って、
毎食食べに来る常連客だ。
「ところで源次郎は嫁さんを探しに東京に出てきたんだろ?
この場所じゃあ、いい女はみんな造ってるだけだろ…」
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