道すがら食堂

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「いえ、もう見つけました。  オレのターゲットを。  まさか、本当に現れるとは思わなかったのです。  …越前雛さん…」 一輝は少し眼をむいた。 そして、「ククク…」と低く笑い始めた。 「どこまで知っているんだ?」 源次郎は一輝の言葉がよく理解できなかったようだ。 一輝は刑事さながらの鋭い眼光を源次郎に向けている。 「…どこまで…  と仰いますと…」 源次郎の言葉と仕草を見て一輝は、「いや、なんでもない…」と言って口篭った。 一輝は、ただの偶然だろうと思ったようだ。 『ガラガラガラ…』 「らっしゃいっ!!」 入り口の扉が開き、源次郎が客を迎えた。 白のブラウスにジーンズ、赤いパンプスに黒のサングラスをした女が、 源次郎の左斜め前の壁際のカウンター席についた。 一輝はその顔に驚きを浮かべた。 だが、何も言わなかった。 「源ちゃん、お勧めを」 「はい、ありがとうございますっ!  お勧め一丁っ!!」 源次郎は軽い足取りで冷蔵庫からかなり重そうな一段の重箱を雛の目の前に置いた。 「へい、お待ちっ!!」 「早いわよっ!!」 雛は大声で笑った。 「デザートも用意してありますので」 「まあっ!  それは嬉しいわっ!!」 雛は重箱の蓋を開け、さらに喜んだ。 「ああ、美味しそう…     
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