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ジリリリリリ…
「…うっさいわ」
むしむしして、眠れなかった。昨日は、つらい熱帯夜だった。
うるさい目覚まし時計を止め、目を擦ってベッドから降りる。シャツに袖を通し、ズボンのベルトをしめた。
ネクタイはまだいいか。
階段を降りて、キッチンに向かう。
「母さん、父さん、おはよー」
「おはよう、ほら、食べて食べて」
「おはよう、那巳(なみ)。」
母さんがお玉を持って、机の上の朝御飯を指す。父さんはもう食べ終わりそうだ。
「はいはい、いただきます。」
母さんの作る料理は美味しい。父さんが言うには、結婚当初はひどかったらしいが、俺のために仕事を止め、専業主婦になった頃から、料理の腕が上がったらしい。
「那巳。あのね、帰ったら話があるから。今日は、早く帰ってきてね。」
いつも楽しそうな母さんの、真剣な瞳。
「わ、分かった…」
俺は頷くしかなかった。
なんだったんだろう。帰ったら、どんな話があるんだ?俺は、登校しながら悶々と考えていた。
「はーなもり!」
「うぉ!!…なんだ、伊織かよ。」
「なんだ、って何!?」
俺の背中に飛び付いてきたのは、幼馴染みの辻本伊織。小学校からの付き合いだ。チビの童顔男子だ。顔は美形だから女子から人気があるが、正直こいつの何が良いのか分からない。
「…お前、今なんか失礼なこと考えなかった?」
ジト目でこちらを見る伊織。
「いや、何にも。」
これで本当のこと言ったら、めんどくさくなる。誤魔化すのが一番だ。幸い、俺は演技が上手いとよく人に言われる。
「…なら、いーけどさ。」
不満顔で、伊織が呟いた。これ、一日中拗ねるパターンだ。…機嫌とっとくか。
「ジュース奢ってやるから、機嫌直せ。」
「え、まじ!?はな、やさしー!」
途端に笑顔になる伊織。
…こいつ、めっちゃチョロい。
教室に着いた。
「んじゃ、昼休みになったら、奢れよ!」
「はいはい、りょーかい。」
伊織は、他の友達と話に言った。
あいつ、性格はめんどくさいけど、友達たくさんいる。
俺は、卑屈だし、目付き悪いから、しょうがないけど。なんか笑えてくるかも。
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