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「そうなんですか」
「ああ、丁寧語とかいいよ。僕カガリっての。近くに住んでて、ここでバイトもしてるんだ」
「七瀬沙月です。あの、ここってカフェ……ですよね?」
「さつきちゃんね、よろしく。そそ、これでもこの辺じゃ結構な人気でさ。こだわりの珈琲と手作りケーキ。欧風ランチも大好評営業中」
「なんていうか、ちょっと聞いてきた話とイメージが違ったっていうか」
「ああ、なるほど。ちょっと見せてくれる? どれどれ……こりゃ大変」
「大変?」
「すっごいのが憑いちゃってる」
「え?」
「定休日のこんな時間に、深刻そうな顔して来たってことは怪異系の悩みかなって。まあ僕も一応、そっちの方が一人前っていうか。良くない魂を祓う、魂師っての」
めちゃくちゃ怪しいでしょ?
にやりとする男の子……カガリに、「そんなことは」と慌てて答える。
「あの、教えて下さい。最近、夜になると変な声が聞こえて……少しずつ近付いてくるみたいで。なんだかわからなくて、怖くて」
「まあまあ落ち着いてよ、嘘なんだから。まるっと信じてくれるとか素直過ぎ」
「――え?」
頭の奥が熱を帯びる。どれが、どこまで、嘘?
思考が止まりかけたところに、彼はにこにこしながら追い討ちをかけてきた。
「さつきちゃん面白い。店長は今いないけど、良かったら相談乗るよ。とりあえずお茶でもしながらさ――」
「結構です」
「あれれ、即答」
「真剣な悩みをからかう人なんて、信じられません。帰ります」
「ぷはは、嫌われちゃった。でも本当に大丈夫? 今夜辺り、出るかもよ」
カガリは舌を出し、両手を胸の前でだらりと垂らしてみせる。
なんという男だ、幽霊の真似でもしているつもりか。
「馬鹿にして。ここの人っていうのも嘘なんでしょ」
「本当に出てきちゃってからじゃ遅いのに。そうだ、もう暗いし帰るなら送ろっか。駅で良い? それともバスで来た感じ? もしかして実はご近所さんとか」
「失礼します」
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