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「なるはず、だったんだけど」
「ほほほ。やれ、非力なこと」
「いやいやいや。そんなはずは」
今度は一度に四つの玉を放る。
しかし、結果は変わらない。
「そちらの娘は心の臓を残しておかねばならぬ。なれどそなたは」
「骨の髄まで我らがいただくとしよう」
ぬらりと舌なめずりをして、二つの首がごろりと斜めに傾く。
「何これ全然使えない。店長、何をくれてんだよ」
「ちょっと、危ない」
慌てた様子で、玉を擦ったり叩いたりしているカガリの腕を掴んで、思い切り引っ張った。間一髪、入れ違いで、生首の大口がカガリのいた場所にかぶりつく。
心臓はどきどきしているし、現実味もない。それでも何とか、さっきよりは身体が動く。
どうにかして、ここから逃げなくてはいけない。
「あった、封魔の札!」
鞄やらポケットやらを漁っていたカガリが、数枚のお札を握りしめて叫ぶ。
「また何も起こらないんじゃないの」
「そんなことないよ。邪なるものの動きを止められる、由緒正しいお札なんだ」
……って聞いたし。
ぽつりと落ちた最後の一言に、不安ばかりが掻き立てられる。
「問題は直に貼り付けなきゃ駄目ってことかな」
「そんなの無理なのと同じじゃない」
「大丈夫。っていうかこのままじゃ、逃げるにも逃げられないし?」
にやにやと笑みを浮かべて跳ね回る首二つが、飛び出したカガリに襲いかかる。
避けきれるかどうか、というタイミングで、いやらしい笑みを浮かべて。
先の虹色の玉が効かなかったのを良いことに、遊んでいるのだ。
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