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「ほれほれ、潰れてしまうぞ。もっと必死に踊るがよい」
「くっそ、見てろよ」
仰向けに転がされたところから、飛び起きたカガリが、片方の生首に手を伸ばす。
貼り付いたお札が妖しい光を放ち、それにあわせて、小刻みに震えた生首がぴたりと動きを止めた。
「そちらさんも!」
もう一体も、お札を貼り付けられると、目を見開いたまま動かなくなる。
「凄い、本当に止まった」
「効いたでしょ? さ、今の内に――」
「ほほほ、何かと思えばやはり非力な……戯れよ」
止まったかに見えた生首が頭を軽く振り、ぎし、と歯を食いしばる。
軽い破裂音を伴って、お札はあっという間に砕け散った。
「そんな」
舞い散る破片を、呆然と眺めて立ち尽くす。
どうしたら良いの、と声をかける暇もなく、視界が大きくぶれた。アスファルトに叩きつけられてから、二人揃って突進を受けたのだと気付く。
「立って、逃げなくちゃ」
必死に身体を起こしてカガリを見やるが、彼はまだ立ち上がれずにいた。
「やめとく」
「何それ」
「ねえ、お姉さんたち。横槍入れた僕は喰わせてあげるからさ、その子見逃してくれない?」
「何言ってるの」
生首たちは、いよいよ可笑しそうにはしゃいでいる。
大きな目玉が、品定めとばかりにぎょろりと動く。
「正直、もう動けそうになくてさ。頼むよ」
「そうかえ、動けぬか」
「ならばそこで見ておるが良い。われらが、小娘をどくみするところをな」
首がずるりと前に出てくる。
「やめてくれ、お願いだから」
「ほほほ、聞こえぬ聞こえぬ」
声を振り絞るカガリと笑う生首。二つを見比べて、薄靄のかかった思考に沈んでいく。
なんだ、結局こうなるのか。
「巻き込んじゃってごめんね」
精一杯の強がりを言った。
二人とも助からない。流石にそれくらい、私にもわかる。
すっかり恐怖が麻痺してしまったのか、おかしな笑みが漏れた。
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