悔しいけど……

75/75
17256人が本棚に入れています
本棚に追加
/413ページ
でも、なんだろう。 私、このお屋敷にに来てから、初めてかもしれない。 尚至さんと過ごす時間が、こんなに穏やかで幸せを感じたこと。 それくらい避けていた。 それくらい壁があった。 それくらい話さなかった。 たった一日だ。 尚至さんに自分の意持ちを言っただけ。 尚至さんが私のすべてを受け入れてくれて。 約束までしてくれて。 これだけでこんなにも穏やかな自分がいて。 だから、ちょっと、私も素直になってみよう。 そう思って膝の上にある頭をナデナデ。 ピクン!となった尚至さん。 耳元に近づいて。 「…私も、幸せです。」 「…あわぁあああぁぁ…!」 「えっ!え!?」 「莉桜!俺をどうしたいんだ!」 「……??」 「もう!お前は!本当に困った!」 …素直になったら、怒られちゃった。 でも、本気で怒っているというより、どっちかと言えば照れ隠しって感じで。 右耳を押さえて立ち上がった尚至さん。 あ、と気づく私。 島津さんが言っていたけど… 「…カンジちゃったんですか?」 「莉桜!やめなさい!はしたない!」 左腕をブンブンと上下に振って抗議する尚至さんの顔は真っ赤で。 「……可愛いです。」 「か!?…莉桜。着替えてきなさい!」 どうやら”話”を優先にするらしく、昨日のように身体を求めたりはしない。 でも、本当は求めたいみたい。 だって、フシューって繰り返してるし。 …私を優先してくれている”我慢”が可愛くて嬉しい。 クスクス笑いながら自分の部屋へ向かった。
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!