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着替えた私は、早速尚至さんの部屋を訪れた。
ノックをすると、優しい「どうぞ」が聞こえ、ドアを開ける。
そこには京谷さんの姿があり、コーヒーのセットをしていた。
どうやら話が長くなるとの予想をしての行動だろう。
テーブルにはしっかりお菓子も用意されていて。
「莉桜。こっちにおいで。」
「はい。」
素直に尚至さんの傍に行き、ポンポンと叩かれた隣に座った。
静かに一礼して部屋を去った京谷さんを見送ると。
「…何から話せばいいかな…」
そう呟いた尚至さんは、コーヒーを一口飲んだ。
…少し、緊張しているっぽく見えた。
だから、すぐに声をかけた。
「…今日は私がちゃんと聞いて受け止める番です。」
「ん?」
「昨日は尚至さんがちゃんと聞いてくれたから。私もちゃんと聞きます。ゆっくりでいいですから、話したいこと全部、話してください。」
「…ふ。……そうだな。」
まっすぐ目を見て言った言葉は、穏やかな笑みを導いた。
そして、私の手を取り、その甲に唇を寄せた。
「…俺は昔、この手に助けられたんだよ。莉桜。」
尚至さんの話は、突拍子もない言葉から始まった。
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