真実

2/52
17257人が本棚に入れています
本棚に追加
/413ページ
着替えた私は、早速尚至さんの部屋を訪れた。 ノックをすると、優しい「どうぞ」が聞こえ、ドアを開ける。 そこには京谷さんの姿があり、コーヒーのセットをしていた。 どうやら話が長くなるとの予想をしての行動だろう。 テーブルにはしっかりお菓子も用意されていて。 「莉桜。こっちにおいで。」 「はい。」 素直に尚至さんの傍に行き、ポンポンと叩かれた隣に座った。 静かに一礼して部屋を去った京谷さんを見送ると。 「…何から話せばいいかな…」 そう呟いた尚至さんは、コーヒーを一口飲んだ。 …少し、緊張しているっぽく見えた。 だから、すぐに声をかけた。 「…今日は私がちゃんと聞いて受け止める番です。」 「ん?」 「昨日は尚至さんがちゃんと聞いてくれたから。私もちゃんと聞きます。ゆっくりでいいですから、話したいこと全部、話してください。」 「…ふ。……そうだな。」 まっすぐ目を見て言った言葉は、穏やかな笑みを導いた。 そして、私の手を取り、その甲に唇を寄せた。 「…俺は昔、この手に助けられたんだよ。莉桜。」 尚至さんの話は、突拍子もない言葉から始まった。
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!