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「…昔?」
「ああ。」
「…会ったこと、あるの?」
「覚えてないかな。」
フッと笑った尚至さんが、私の頭を撫でた。
「…初めて会ったのは、莉桜が小学校に入ったばかりの頃かな。小学校の校庭の端にあった木の下。」
「校庭の?……あった、かも。」
「俺はそこでいつも一人で本を読んでた。」
「…本………あっ!」
「思い出した?」
小学校。木。本を読んでいる"お兄さん"
いた。確かにそんな人がいた。
たった数日だったけど、毎日会いに行った。
…それが尚至さんだったの?
「あの頃の俺は、ずっと家族の温もりに飢えていた。
一人だけ家族と過ごせず、我慢して我慢して辿り着いた結論は、俺は家族にとっていらない存在かもしれない、と強く思っていたんだ。」
「…尚至さん…」
「そんなときに出会ったのが莉桜。そして、長峰製菓のお煎餅だった。」
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