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(何者だよ)
呆然と見ているあいだに歩きスマホの人が私に3人ぶつかってきた。
4人目がぶつかってきたとき、遅刻の危機を感じて歩き出そうとした。
「そこのお嬢さん! なに疲れた顔してるの!」
ここは池袋の地下道だ。お嬢さんはたくさんいる。私は勘違いする必要がない。そもそも、疲れた顔なんて……。
「体動かそう! 朝は広場で体操だ!」
誰にむかって言っているのかしらないけれど、ここはアナタがいうところの広場じゃない。
「さぁみんなで! エンジョイ! サマー!」
額からしたたる汗を拭きながら、JR山手線の改札を抜けた。
平成最後の夏は命の危険が叫ばれるほどの暑さに列島ごと襲われている。
一人暮らしの自宅マンションから新宿の職場までドアtoドアで1時間。通勤における暑いポイントをあげるならダントツ一位は山手線のホームだ。屋根のある日陰なら涼しいんじゃない? というのは愚問。1日の平均乗降客数ランキング毎年ワンツーフィニッシュを決めている池袋と新宿を利用する私にとって地下道が蒸し器ならホームは鉄板なのだ。
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