夏小僧

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 両手を腰に当てている。人々は吹き出る汗をぬぐいながら会社にむかって歩を進める。 「さてと! はじめるぞ!」  男が動きはじめた。下半身はそのままに、上半身をおおきくひねって勢いをつける。 「ウオリャア!」  なにかを放り投げた。行き交う人間を避けるように広がるそれは、どう考えても近くの交番から警官が走ってくるもので。 「テントもワンタッチの時代だ!」  また腰に手を当てて高笑い。 「さあさあ! みんなで遊ぼう!」  いつの間にかバーベキューセットが並んでいる。足りないものは河だけだ。  交番に目をやるが警察官は観光客の応対でそれどころじゃなさそうで。 「みんなで憂鬱を吹き飛ばそう!」  こっちの汗が吹き出した。交番に駆け込むべきか、会社に逃げるべきか。 (だれか、どうにかしようと思う人はいないのか?)  あたふた。あたふた。  下手な人が操るマリオネットみたいな動きをしていたからか。だれかが近づいてきた。 「あんたにも見えるのか、夏小僧」  真横に知らないサラリーマンが立っていた。歳のころは私より若干年上といったところか。 「なんなんですか、あれ」  知らない人でもいい。あれの正体を知っているなら教えて欲しい。     
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