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リンネ歴14年。
それは地球から新たなこの星に、辿り着いてからの年月。
環境汚染、海面上昇、食糧難に水不足。誰もが予期していながら誰にも止められなかった地球から、生き残った地球人達は、宇宙コロニーへと住居を移した。
自給自足型のファーム付き宇宙船内で一生涯を終えるのが当たり前になっていた中、彼等一団は開拓次第では住めるようになるかもしれないという惑星を見つけ出すことが出来た。
科学班と技術班とが毎日のようにコロニーと、防護服を纏って外へと行き来し、この星をどう開拓すれば住めるようになるか、頭を捻って試行錯誤を繰り返し、とにかく空気さえなんとかなれば、外での完全な生活は無理でも、コロニー内だけで生涯を終える、そんな虚しさからは解放されるのでは。
まずはそれだけを目標に、この星を本気で開拓しようと賛成多数のコロニー住人の決を持って、この惑星はリンネと名付けられ、星歴を数えるようになった。
この星に辿り着くまでに、約二年の年月があった。その中で技術や科学の力では補うこと出来ないもの、それは荒んでゆく人の心を宥めてくれる存在、そんな癒しの効果を与えることだけは彼等にも出来ない一つだった。
ところが、そんなコロニー生活を一転してくれる出来事が起こった。
それはこのコロニー内で出会い、恋に落ち、子を宿した二人の幸せそうな姿と、生まれてくる子供への期待。
コロニー内は基本、地球環境と同じ条件とはいえ、生まれてきてくれないことには判らないこともあろう。
住人の誰もが二人を気遣い、新たな命の誕生を待ち続けた十月十日。
通常よりは小さく、そして血管がそのままでも見えるくらいに白を通り越した透明な肌を持った、けれども元気に泣いて生まれてきた男の子の誕生に、コロニー内は大きく沸いた。
そしてそれと同じくして、居住可能かもしれない惑星が見つかったことで、生まれたばかりの赤ん坊は奇跡も呼んでくれた天使だと誰もがこぞって可愛がり、愛しむことに余念なかった。
特に当時、六歳だったアバンという少年と、四歳になろうとしていたヒーナという少女の二人は、初めて見る赤ん坊というものに対する好奇心から、大人に混ざって常に甲斐甲斐しく世話をくれてあげていた。
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