Ｔ渓谷の怪

　これは私が高校生のころの話です。
私が通っていた高校はＳ市のＳ高校でした。この高校では、地学の授業の一環でＴ渓谷というところへ生徒で出向き、地層を観察するという活動を行っておりました。机に座って教科書を眺めるよりはよほど楽しいですし、この活動が嫌いだという生徒はあまりいなかったように思います。
　Ｔ渓谷へは高校から皆でバスに乗っていきました。長靴を履いて、山道を歩き、浅い川を渡って歩きます。少し大変ですが、怪我をしたりするような難所もないですし、仲の良い友達と自然の中を歩くのは気持ちがいいものです。そして何より、最大の目当てである地層の流れる様子も、迫力があってなかなか見応えがありました。
　さて、そんなことで、私達は満足して、学校へ戻ってきました。クラスで仲間たちと話していると、Ｋという少女が慌てた様子で教室に飛び込んできました。
「ねえ、たいへんたいへん！　とんでもない記事、見ちゃった」
　そう言って彼女が差し出したのは地元の新聞でした。