【風のように歌い、風のように消えよ】

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 声に反応? 切り札?  なんのことかと思いながら青年が少女の姿が見える位置までくると、少女を前にしていた少女よりも年上だろう少年が舌打ちをくれると、「とりあえず手と足は縛っておけ」と言い、思ったよりも広い敷地だったらしい、奥から出てきた五、六人の少年達が青年の動きを押さえつけた。  青年は何が起こっているのかもかわらないまま、手足を縛られ壁の角へと圧しやられた。そんな青年の前に少女が腰を落とすと、ねぇそうでしょ? と訊いてきた。 「あなた、特Aの政府の人よね? それでも私の『声』に反応してくれた。お願い、あなたの力を貸して。私達はこの生き方から抜け出したくてお金を集め、同志を募ってきたの。でもAクラスの人ですら、ここには私一人。彼は辛うじてBクラスだけど、他はEクラス以下しかいない。これじゃまだ政府に突撃するには心許なく居たの。あなたがあなたの意志で私達に賛同してくれるというのなら、私も自分の『声』であなたを縛ったりはしない。あなた、不思議に思わなかった? 自星の統治さえまともに出来ていないのに、他星の動向ばかりを気にして干渉し続けるこの現実を」  そうは言われても、少女の言う「現実」とやらに今日、初めて向き合った青年には何も言い返せなかった。ただ言えたのは。 「俺には───わからない」  すると少年が鬼の首を取ったかのように高笑いし、言った。 「ほらみろ、何もわかっちゃいねーんだよ、お役人連中は。なのにどうしてそいつが役に立つ? 金目の物だけ奪って捨ててくるしかねぇな」 「どうしてそうすぐに乱暴な思考に走るの! あなたの発言はEクラスの人間へ影響を及ぼし過ぎだわ」 「それがどうした? やることは一緒だろ。役人連中に一泡も二泡もふかせてやるんだ。それともソイツを盾にして、政府閣内に押し入るってのもいいかもな」 「確かに私達がやろうとしていることは、最終的には現国家の在り方を見直してもらいたい、そう思っての行動である以上、どんな手を使ってもしょせん私達はレジスタンス。それくらい私だってわかってる。けどそれ以上に有意義な交渉が出来たらって───」
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