【千の花を抱いて】

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 それからどれくらい経っただろうか。少年はこの地に下り立ってからの経過時間を確認したが、やっと一時間を回ったかといったところだった。何もない土地。乾燥しきった大地は、吹く風もないため、砂ぼこりさえ立つ気配もなかった。  死する星───それは生き物が居なくなって何百年と経ち、惑星爆発を起こされる前にフィフス星の能力者達が一斉に力を纏め、惑星の爆発による周囲宇宙への影響を最小限に食い止めるべく、行われる最後の審判。  死する星への調査とはそういうものだと習った。ならばこの星に本当に生き物がいないかどうかを確認するのが先か? と思い立った少年は、少しならばと常に自身を覆っているガードを外し、反響するものがないかオーラの反動を待った。すると。  (向かって少し右───何かがある)  少年はその「何か」を求めて一瞬にして空間を切り裂いた。途端。  幹の細い樹がすでに何百年と生きたかのように、カラカラに干からびた四肢をさらしながらも、緑の葉を辛うじて残していた林のような場所に下り立っていた。この場合、この星はこれでも死んでいると判断すべきなのか、それとも手を加えることで「死する星」から立ち直れるのだろうか、戻ったらひとまずこのことは報告に加えなければ、と少年が弱々しくも空に向かって枝葉を伸ばしている樹に労りの指を届けようとした時。 「誰?」  女の子の声が少年の背中を叩いた。驚き振り返った先には、自分達フィフス星人と変わらぬ身姿を持った、「この惑星の人間」が居たことに驚きを隠せなかった少年は、同時に戸惑いを持たずにいられなかった。 (人が───植物だけでなく、動物がこの惑星にまだ生き残っていたとは)  これのどこが「死する惑星」なのかと、疑問に思わずにいられなかった少年の心など知らない少女は、再び少年に言葉をくれた。 「どうしたの? 迷子なの? お腹すいてる? ママが作ってくれたお弁当、半分食べる?」  ママ。弁当。その言葉から、このほぼ干からびてはいる惑星とはいえ、まだ人が生き、社会ルールが適用されていて、どれくらいの人数かはわからないが「集落」と呼べるくらいの人数がそこに居てもおかしくはなくて。
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