【千の花を抱いて】

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 少年は少女に手を振って、再び枯れ木の森の中を少し進んだ先で、教官のいる場所を思い描き、一気に男の下へと戻り、「ご報告があります」と切り出した。  そしてそこで自分が見てきたこと、聞いてきたことをありのままに話したものの、教官たる男は眉一つ動かさず、それがどうしたと言わんばかりの態度を崩しはしなかったから。  少年は悟った。「死する惑星」の基準はあくまでも、フィフス星にとって有益かどうかの基準で選ばれているだけだということに。  気がつけば青年も戻ってきていた。男は「全員揃ったことだし」と言い、少し早いが帰還するか、と言っただけだったから。  少年は自身の血が熱く沸騰するのがわかった。左腕のセンサーは、彼の発する能力に負けて、カランと音を立てて乾いた大地に落ちた。そして。  少年が少年の姿でなくなった時。天から「雨」が降ってきた。乾いた大地の斜面に沿って最初はただ流れる程度の雨量が、あっという間に窪地に池を作り、大地に浸透し、地核変動への働きが変わったことを男も青年も知るに至り、青年は、 「こんなことが───」  と呟くしか出来なかった。が、男はやれやれと言わんばかりに腰をあげると、 「ここから先のことは、おまえには関係ないことだ。見るな、言うな、耳を塞いでそこに立ってろ」
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