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【地下水脈】
森の中、山の中、林の中。
井戸の側、廃寺の床、砂漠の底。
命芽吹く場所ならば、それは見えなくても存在している。
命無いように見える場所にも、誰にも知られず密やかに眠っている。
見えないからこそ存在しているとも言うその命の線。
どこからともなくそれらは集まり、一つになり、一つから大きくなり、一本になる。
最初は不規則で統率もされていなくて、連なる意味さえ知らされていない彼らは、それでもいつしかリズムに乗って、先へ先へと流れてゆく。
徐々に徐々に力を溜めて。
ゆっくりゆっくりスピードを上げて。
ポト、ポト、ポト。
ピチャン、ピチャン、ピチャン。
トク、トク、トク。
ドッ、ドッ、ドッ。
そんな彼等のリズムに乗って、見えない力が踊り出す。
見える力に生まれ変わるため、リズムをバネに跳躍する。
ポト、ポト、ポト。
──────ごそ、ごそ、ごそ。
ピチャン、ピチャン、ピチャン。
──────ぴり、ぴりり。
トク、トク、トク。
──────むく、むく、むく。
ドッ、ドッ、ドッ。
──────ずん、ずん、ずん。
最終変化が訪れるのは、きっと夜から朝へと変わる瞬間。
集約されたありとあらゆるエネルギーが解放へと向かい出すその時。
私は見た。空虚の丘の上、一面に咲いた花達を。
水をやる人間が去った後も、花を咲かせた者の正体を。
「……地下水脈」
呟いた私の小さな声も、滴のように吸い込まれていった。
【Fin.】
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