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「ともかく、先輩の気になる人、気になるなあ」
ん? 結局話が戻って来た。
「えっと、それはつまり(君が)気になる(好意あるいは興味)人(僕)が気になる(好意)人(君)のことが気になる(興味)ってこと?」
すると彼女は立ち上がって僕の顔を見た。驚いて、数秒見つめ合った後、彼女を再び、満面の笑みを浮かべた。今日見た中で一番の笑顔に見えた。
彼女はおもむろに窓に向かった。いつの間にか雨脚は弱まっている。日が沈んだのか、闇は一層深くなっていた。
窓を開け、彼女が深く息を吸って、ゆっくりと吐いた。
「止んでないけれど、そろそろ帰りましょうか。傘、入れてもらえます?」
「え、ああ。いいけど」
「ありがとうございます」
彼女は窓の鍵を閉めて、鞄を肩にかけた。僕もリュックを背負って歩き出す。人のいなくなった廊下を歩く。二人の足音が、無音の廊下に良く響いた。
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